スピッツ 「1987→」
「大将、やっぱこれだよ!!この味!!!変わんないね!!!」
「アリガトゥゴザイマゥスッ!!!!」
「大将、なんかさぁ、コツとかあんの??人気のあるお店でもさぁ、かわっちゃうじゃん味ってさァ」
「…そうスね、少しずつ変えてることっスかね…」
「えっ?」
「変わんないためには、少しずつ、成長して、そのゥ、味をゥ、キゥワメティ、いくこごガゥ、ドゥアイジィ、なんじゃないスかね…」
はい、このフリで始めるスピッツです。
今日はスピッツの「1987→」を。
これでいくと、「スピッツは変わらない」と言われるけど、それは「代わり続けているからだ」という理屈を最初っから言っていることになりますね。
このフリからスピッツを書くというのはなかなかのもんですね。
はい、すみません。
ただ、スピッツは、「かわらないために変わり続けているバンド」では無い気がするんですよ。スピッツは「変わり続けているのに変わったと思われないバンド」なのではないでしょうか!!!
いいこと言った!!!たぶんいいこと言った!!!
というのが、けっこうわかりやすく出ている一曲だと思うのですよ。
この曲は草野氏曰く、「バンド30周年のタイミングということで“ビートパンクバンド・スピッツの新曲”という想定」とのことですが、結果として「初期のスピッツ」ではなく、ものすごく「今のスピッツ」が良く見えます。
これは、きっと多くのところで言われていることだと思うのですが、近年、スピッツで最も大きく変わったのは「詞」です。
僕がスピッツの歌詞で最も好きなのが、「運命の人」なのですが
バスの揺れ方で人生の意味が 解った日曜日
でもさ 君は運命の人だから 強く手を握るよ
ここにいるのは 優しいだけじゃなく 偉大な獣
愛はコンビニでも買えるけれど もう少し探そうよ
変な下着に夢がはじけて たたき合って笑うよ
余計な事は しすぎるほどいいよ 扉あけたら
本当に完璧。完璧な歌詞。大好き。大好きだけど、僕のアタマでは全くと言っていいほどわからない。でもこういうのって、「えっ?どうして??全然わかるよ???」という人もいるんですよ。きっと物事の組み合わせ方とか考え方の順序とか、それがスパっとハマる人はわかるし、物事の角度のようなものを間違うと全くわからないんでしょうね。その理屈だと僕は角度を間違え続けてるわけです。わかる、わかるよ(涙)…。
話を戻しましょう。特に最初の2行が最高です。そして、そこからコンビニにつながるのがまさに草野ワールドですわね。
それに比べ、最新のスピッツの歌詞は、ぐっとわかりやすくなっている。
現段階での最新シングル「みなと」の導入は
舟に乗るわけじゃなく だけど僕は港にいる
知らない人だらけの隙間で 立ち止まる
遠くに旅立った君に 届けたい言葉集めて
縫い合わせてできた歌ひとつ 携えて
とてもとてもこれも素敵な歌詞です。そして、これは僕でも明確に情景が浮かぶ。
でも、これも間違いなくスピッツ。
この凄さは、あきらかに描写の手法が違うのに、しっかりと同じ作家が作っているのがどこかしらわかるところです。まぁ、知ってるからそう思うのかも知れないですが…。
登場人物も場面も違うのに、しっかりと同じ星の出来事に感じられる手触りを持った歌詞。でも違う。あきらかに違う。
そして、次が今日の一曲、1987→
なんかありそうな気がしてさ 浮かれた祭りの外へ
ギリヤバめのハコ探して カッコつけて歩いた
らしくない自分になりたい 不思議な歌を作りたい
似たような犬が狼ぶって 鳴らし始めた音
です。凄くないですか??この歌詞。比喩もへったくれもない。誰がどう見たってスピッツ自体を歌っている。でも、これでさえも同じ星で鳴らされてる曲に感じる。でもこの曲は明確に「運命の人」よりも時代が経って、年齢を経ている。歌詞が回想のような歌詞だからというわけじゃなく、詞のてざわりに円熟味がある。まさに今のスピッツが過去を歌っている歌。何をあたりまえのことを!という感じですな。すまぬすまぬ。
「ギリヤバめのハコ」という歌詞にギリギリ感が漂いますが、それを全くものともしないのが、草野氏のチャーミングさとあの最高の歌声の力でしょう。ヘビーメロウでも「無茶ぶり」とか、歌詞としてはまさにギリヤバめなチョイスをしているワケですが、本当にゆるがない。何故か。・・・と書いて急にひらめいた!スピッツはある種今の時代を常に生きながら、少しだけ平衡世界にスライドしているから、じゃないだろか!!
スピッツの描くパラレルワールドがぐっと現代に寄ってきているのが今の時代だとすれば(もしかしたらスピッツの世界に今の世界が寄ってるのかもしれないけども)、この先スピッツが描く世界はどんなものなのだろうか…。
はい、完全に今のヒラメキ、思いつきで書きました。でもなんかパラレルワールド感はありますよねスピッツ。
で、ビートパンク、とのことなんですが、僕はこの言葉良く知らず、勝手に「あぁ、BOO/WYね!」と思ってました。調べてみたら外れてはいないわけなのですが、おそらくここで指し示すのは「ブルーハーツ」ですね。マサムネ氏がブルーハーツに衝撃をうけてやる気を無くしたのは僕でも知っている有名な話です。出た当初のスピッツはかなりのパンクスだったのも有名ですが、そのビートパンクバンドとしてのスピッツの新曲という”てい”のこの曲。
全く、と言ってよいほど、ビートパンクの先にあるであろう楽曲・・・ではない、です。
なんなら、ブルーハーツの先ともいえるであろう、クロマニヨンズの曲と比べてみても良いです。ヒロトとマーシーは、とにかく、研ぎ澄まして研ぎ澄ましてトギスマシテいくことで、「今」を鳴らし続けています。そのためにバンドは解散したり休止したりする必要があり、合い変わらず肉体も研ぎ澄まされ続けています。その削りに削って残った音にユーモアをふりかける(もしくは削りに削ったらユーモアが残った)楽曲群と比べると(いや、比べなくてもいいんですけどね…)、この1987→はめちゃくちゃ音が豊か。
少なくとも削っていない。
しっかりと歳をとり、経験を積み重ねてきた「スピッツの音」そのものです。
何もビートパンクではない。曲が他より早い感じのスピッツの一曲です。
歳を重ねたスピッツが、その経験を豊かに発揮した円熟の音。
それはロックじゃない、と言うのかもしれませんが、
違う違う、それこそが「スピッツというロック」です。
「それはロックじゃないといわせるロックンロール」がスピッツです。
それが、ちょっと「ビートパンク」というなんちゃってを借りることで、いかんなく発揮されている名曲。それが1987→です。その円熟味こそに泣けます。感動、感涙です。
スピッツは変わらないどころか、しっかり歳をとって、表現もストレートになっている。変わらないために変わったどころか、だいたい変わっているんです。たぶん。そして、何よりメンバーは「かわらない」なんてものに興味は無いんじゃないですかね。だからこそしっかりと今の流行に熱心だし、今の音楽を聞いてる。変わりに変わって進化につぐ進化を重ねた結果がおそらく今です。
でも、あのエヴァーグリーンな声と、一度のメンバーチェンジもなく作り上げてきた盤石のバンドアンサンブルが、しっかりとスピッツであることを届けてくれる。
ヒロトとマーシーが音(と自分)を研ぎ澄ましてここまで来たのであれば、
スピッツはひたすらにスピッツであることを研ぎ澄ましてここまで来たのです。
だから、スピッツはスピッツであり続けることに圧倒的な強靭さがある。そう簡単には揺るがない。
だからこそ、全てが名曲で、全てが金字塔です。
その最新の名曲が、1987→であり、ヘビーメロウであり、歌ウサギなのです。
あぁ、最高。
最高スピッツ。
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