米津玄師「海の幽霊」
映画「海獣の子供」主題歌であるこの曲。映画もとても興味深いです。
先日MVがyoutubeにアップされ、僕は仕事中だったのですが、たまたま聞ける環境にいたので即見ました(おい)。そして、こんな半端な状況で見るべきレベルのものでは無かったことを後悔しました…。
凄い。とんでもない一曲。何というか、根本的なレベルが何段階も違う。
まず、わずかなピアノの音に続きすぐに歌い出す
開け放たれたこの部屋には誰もいない
潮風の匂い滲みついた椅子が一つ
というそれぞれの脳裏に明確に情景が浮かぶ歌詞が、重厚なコーラス(オートチューン?→デジタルクワイアと言うそうです。今日ナタリーさんの記事で知りました!)とともに歌われ、美しいBメロを経て、
星が降る夜にあなたに会えたら
あの夜を忘れはしない
と歌われるサビがもう、もう本当にたまらない。凄い。
メインのボーカルの声と、コーラス、演奏がほぼほぼ同じレベルで響く。声が音のようになり、それは波の音のようでもあり、海の中での呼吸のようでもある。
そして、再びAメロBメロの後、サビにいかずに間奏へ、そしてサビへ至る流れが本当に美しい…!!!
音楽が景色そのものになっているくらいに雄弁に語る。
あと、オーケストラというか弦楽器の扱いが凄くきれいだと思います。最近星野源さんとかもそうですが、ただただ曲をドラマチックに仕立てるために弦を使うのでは無く、明確にそこにその音が「必要」で弦を使うことが増えていて、それがとても効果的だし、綺麗です。
そして、いうまでもないのですが、このMVは、映画「海獣の子供」の映像で彩られているのですが、これがひたすらに美しい。海の美しさ・温かさ・静寂・恐ろしさ・おぞましさ…、命そのものである海をたった4分ほどで見事に描いている。当然これは映画のシーンからの抜粋なのでしょうが、これ自体が明確に一つの作品として完成されている。
米津さんは、大ヒット曲(というか、未だにヒットし続けているバケモノのような曲)Lemonの後、到底一般的なヒット曲とは違うベクトルの「Flamingo」をリリースしました。そして今作。最早、彼の曲は「ヒットの定石」そのものを変えている。アーティストが、ポップでドラマチックなシングル曲でファンの心を掴み、そこからアーティスト自身が敬愛する洋楽的な曲やよりディープな曲へと導いていくような流れが今まで多くあったと思うのですが、彼は、そもそもシングル曲でさえも、その深さを持ちながら、何よりもポップでドラマチックという、とても理想的な、とんでもない段階に達しているように思います。
この曲の最初から最後まで、ひたすらにドラマチックでファンタジックなのに、現実よりも生々しいような生命の鼓動そのもののような音が鳴っています。是非是非劇場で聞きたい!!!!