私立恵比寿中学 「トレンディガール」
エビ中は、変わり続けていくグループである。
アイドルグループというのは、メンバーが入れ替わるのが常とはいえ、メジャーデビュー後だけでも、9人から3人が抜け6人になり、かほりこが入り8人。そして松野莉奈さんの急逝・・・。
その影響も少なからずある形で、2018年に(少なくとも一般的知名度においては間違いなく)グループの顔であったろうぁぃぁぃが脱退(転校)。現在6名となりました。
余談ですが、ももクロもエビ中も(おそらくスターダストのグループは)、メンバー脱退時には「卒業」という表現は使わないです。あくまでも脱退であり、エビ中は学校なので転校(カッコ付けで脱退)です。それこそ学校なら卒業でも良いような気がしますが、恐らく、卒業はゴールであり、今後も続いていくグループから抜けることはあくまでも「脱退」である、ということなのだろうと思います。確かに「個」で考えれば「卒業」も良いのだろうとは思いますが、あくまでもグループに所属していたメンバーとしては「脱退」なのでしょう。僕はその表現がとても好きです。一見突き放しているようですが、卒業の方が、そこで終わりのような気がするし、実際スタダのアイドルは脱退後も様々な交流がオープンに行われています。それこそエビ中の元リーダー宮崎れいなさんが慶應大学のミスコン(ていうか慶應ってのがまず凄いッスよね・・・)に今年ファイナリストとして残ったのですが、それをオフィシャルにエビ中の藤井マネージャー(校長)が応援していたのは涙が出そうでした・・・。
ハイ、余談が長引きました・・・。兎に角、様々な出来事、運命の悪戯を経て、今年で結成10周年を迎えたわけです。気がつけば、「実力派アイドルグループ」というように呼ばれることも増え、つい先日リアルサウンドにこのような記事が出ていました
当初「キレの無いダンスと不安定な歌唱力」をキャッチフレーズ(?)にしていたわけで、思えば遠くへ来たものです(感慨)・・・。
ただ、このような記事を読んで、実際にYouTube等で彼女たちのライブを見ると、少々拍子抜けするかもしれません。彼女たちの実力は、決してLittle Glee Monsterのように歌唱力・声量・ハーモニーで圧倒するものでは無いです。確かに、当然口パクではないですし、初期に比べるとものすごく歌の実力がついているし、最近の曲では、2人ずつでずっとハモりながら歌っていくような曲もあります。でも、音程を外すことはあるし、声のパワーで一気に持っていけるのは柏木さんや真山さんくらいではないでしょうか。
彼女らの歌の強みは、パワーではなく、表現力なのだと思います。それも「ワタシトテモカンジョーコメテウタッテマース!!!」という表現力ではなく、上記の記事にあるように、その楽曲にぐっと寄り添った、歌い手としての表現力です。一見派手ではないかもしれませんが、これができるアーティストはそうそういません。
加えて言うと、もともと歌唱面の中軸を柏木さんと共に担っていたぁぃぁぃが抜けました。あと、個人的には松野さんと小林さんの、170㎝近くの身長がある、言うなれば「ツインタワー」はアイドルグループとしては今後ストロングポイントになると思っていました。しかし、それはもう見ることはできません。
つまり、グループは手に入れた武器を失いながらも、これだけの評価をされるだけの実力を身に着けていったんです。あぁ泣けますな。それだけで泣けます。
更に更に加えますと…
これは、今日公開された、メンバーの安本さんが作詞作曲したソロ曲です。
これ、凄くないですか??
アイドルに限らず、プロの作曲家さんではない方が曲をつくると、サビのパワー(高音ボーカル)に頼ったような曲になったり、言うなればどうしても「鼻歌」で作ったようなものになりがちだと僕は思っているのですが、これは、派手ではないですが、単純に良い曲だし、ひとりよがりになっていない。彼女が音楽が好きで、真剣にまっすぐと向き合って作ったものであることがひしひしと伝わってきます。
おそらく、エビ中というグループは、目の前の課題や取り組むことに対し、本当に生真面目に、真剣に取り組んできたからこそ、現在の6人が史上最強になり得ているのだと思います。
そして、この「トレンディガール」です。
作詞作曲はゲスの極み乙女の川谷絵音氏。以前チームしゃちほこに、「シャンプーハット」という曲を提供していましたが、これもとても良い曲でしたし、彼の作曲家としてのスキルの高さを感じる、しっかりとしたアイドルソングでした。
が、今回のこの曲は、ゲスのメンバーに加え、百戦錬磨のバンドメンバーを従え、演奏面も含めて、彼のバンドの曲と言ってもよいくらいに、アイドルソングのていをとっていないものだと思います。
もちろん、絵音氏の曲なので、変化に富んではいるのですが、高音をはりあげることも、かわいらしさを見せることも多くない、アンニュイさすら感じるテンションで最初から最後まで進んでいく、ある種淡々とした楽曲です。
それを、楽曲にメンバー一人一人が寄り添いつつも、しっかりとそれぞれの個性を見せることも出来ている。楽曲の良さを、彼女たちにしかできない表現スタイルで、しっかりと聞く側に届けられている。これは、ある種到達点のような一曲です。
個人的には中山さんの歌声が、世界中探してもそうそう出会えない、とんでもないフックを生んでいると思います(当初、パワーとテンションのみで押し切るような彼女のボーカルスタイルは、音程がとれていないことも多く、今後どうなるのかなーと思っていたんですが、まさかそのスタイルのままで上手くなるとは思ってもみませんでした…)。
でも、この10年間、常に全員が120パーセントの実力を出し続けてきてたどり着いたような状態でありながらも、未だ彼女らは、過渡期にいるように思います。大きな変化の過程の途中にいて、劇的に何かが変わりそうな印象に満ちています。その直前であるこの感じは、ある種のあやうさすら感じるもので、それも含めて今のエビ中の魅力だと思うんです。
この4月で、中学生どころか高校生も居ないグループになったエビ中。
10年目にして未だ、底が見えないそのグループとしての実力は、秋にリリースされる予定の今年2枚目(!)のアルバムで更に大きく発揮されるのだろうと思うと、今からとてもワクワクします。