ヅレブロ  日々の徒然~音楽、映画、ドラマ、キャンプ~

アラフォー男子inHokkaido。徐々に記憶力が落ちてきたワタクシの備忘録的ブログ。もし、だれかのやくにたてばとてーもしあわせです。これから書きたいことを考えてタイトルを変えてみました!!

GEZAN 「東京」

今更僕が書くまでもなく、東京という曲名には名曲が多い。東京と言う曲について書くあまたのブログがこの書き出しで始まるんじゃないか、というくらい東京という曲名には名曲が多い。間違いない。僕もそう思う。「東京」っていうプレイリストを作っていたくらいだし間違いない(まぁ、今なら東京で検索してシャッフルすれば良いのでしょうがね…)。ていうか、むしろ、東京という曲名で良い曲じゃない曲を知らない。でも、結局のところ、僕は東京に住んでるわけでは無いし、行ったことだって数えるほどしかないので、きっと東京に住んでる人の聞く東京と僕の聞くそれは決定的に意味合いが違うのだろうと思う。そのくらい、大体の曲が、その土地そのものと言うよりも、そこに漂う空気、集合体としてのここにしか無いもの、である東京を歌っている。それはとてもナイーブなものだから、きっと名曲になるんだろう。

 

GEZANの東京という曲(youtube)が、僕のスマホの通知に出てきたとき、勝手に、GEZANのボーカルである、マヒトゥ・ザ・ピーポー(以下マヒト)のソロワークに近い曲なのかな、と思った。GEZANがハードコアで、過剰に刺激的な音を鳴らしているのに対し、彼のソロワークはとても繊細で壊れ物のような音楽だ(でも、それはそれでとても過剰で刺激的だと思う)。当然、GEZANでそのまんまのことはやらないだろうけど、昨年はソロで2枚もアルバムを出したことだし、きっとその影響は強いのだろうと思った。ジョンフルシアンテの加わったレッチリみたいな感じ。

 

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そして聞いて(youtubeで見て)、びっくりした。びっくりというか、その音から、映像から、全く目が離せなくなった。凄い曲だった。確かにこれは東京だ。メランコリーも、刺激も、儚さも全部ある音だ。そして今までのGEZANの音が全部つまって、更にその先にあるような音だ。で、フィールドはここ、東京(いや、僕のここは札幌の隣町ですが)。

 

間違いなくこれからGEZANというバンドの代表曲になるであろう、決意表明のような、旗のような一曲。

 

去年、僕はマヒトさんを結構目の前で見た。彼と青葉市子さんののユニット、nuuamm(縫う編む)というユニットのツアーが北海道の美唄に来てくれて、めっちゃ楽しみに家族で見に行った。そのとき、市子さんとの転換のちょっとした時間。彼は僕らのすぐ近くを通り過ぎて行った。とても優しそうで、繊細な表情。笑顔で僕の子供に微笑みかけてくれて通り過ぎて行った(その瞬間は僕はみてないけど、妻が見ていて教えてくれた)。

 

きっと彼は、大事な大事な彼にとっての日だまりのようなものを大切に守ることができる人なんだろうと思う。なんていうか、ナウシカみたいな。だからこそ、この曲の彼は守るべきもの、真実の色、いろんなもので塗り固められた世界・報道・政治、見えているようで既に何重ものイロメガネをかけてしまっている僕らに、本当の日だまりの場所、色を彼はきっと伝えようとしてくれているんだろうと思う。

 

正直、最初聞いた時はとても驚いた。想像していたよりはるかに明確なメッセージソングだった。彼が今の社会について強いメッセージを持っているのはツイッター等で知っていたし、それこそそうでなければ、フリーライブ・フードフリーの全感覚祭のようなことはやらないと思う。でも、ここまではっきりと楽曲で歌ってくるとは思わなかった。前作の赤のイメージは今作にも続いているけれども、この曲に通底しているのは、深い深いグレーだ。濁っているようにも見えるけど、とても澄んでいるようにも見える。きっとこれは「にごり・よどみ」も含めてリアルだからだ。リアルなうえで、とても繊細で、ある種ロマンチックだと思う。でも夢想的ではない。ロマンをしっかりとリアルに届けたい感情がここには迸っている。

 

この曲ではっきりと、最初に彼は「これは政治の歌ではない」と歌っている。そして、政治と言葉にしたときに浮かぶのは「花を見て笑う好きな人の顔であるべきだから」とも。そして、東京についても「この街に価値は無いよ 命に用があるの」と歌っている。ここで届けられる言葉は、政治というワードで本来くくられるものではなく、あなたに届けるべきものなんだ。そして、更に本来はその政治とはあなたであるはずなんだ、ということ。漠然としたものではなく、あなたの命の鼓動を求めていること、多くの命が灯されている東京でも、そこでみつめるのは一つの大事な大事な命であること。

 

そう考えると、極めてソロワークの延長上であるようにも思う。とてもとても尊い楽曲。そして、同時に、そんな言葉でただ解決してはいけないもの。この詞につめられた今のリアルは、独りよがりにリスナー(僕)が曲を聞いて終わってよいものではない。終わらせられるものでは無い。多くの現実をしっかりと見つめて、行動を促すものだ。

 

この曲は1月29日にリリースされるアルバムの先行公開曲だ。そしてアルバムのタイトルは「狂(KLUE)」。きっとそこに収められている楽曲は、鏡のようなものである気がする。聞く僕らに向けられた鏡に映った自分は狂っているのか。狂うとはそもそも何なのか。

でも、そんな理屈よりも、まずは早く聞きたい。ただただ聞きたい。

 

 

狂(KLUE)

狂(KLUE)

  • アーティスト:GEZAN
  • 出版社/メーカー: 十三月
  • 発売日: 2020/01/29
  • メディア: CD