香取慎吾 「20200101」
楽しい。とても楽しいアルバム。
先行曲もとても良かったので、期待して聞いた1枚だったのだけど、しっかりとその期待を上回る…というよりも、その期待値の幅をグッと広げてくれるアルバムだった。
ただ、突拍子の無い楽曲があるわけではなく、非常に表情豊かな、香取慎吾という人物がいろんな形で声をかけてくれたり、楽しそうな姿を見せてくれる、もの凄くステキなアルバム。
この、TeddyLoid&たなか(ex.ぼくのりりっくのぼうよみ)に始まって、氣志團・スチャダラ・クレバのベテラン勢や、yahyel等の尖ったセレクトも!!そしてBiSHでシメという見事なコラボレーション。キムタクのアルバムの「素敵な同志」という感じのセレクト(これもとても誠実で素敵)とはまた一線を画していると思う。やっぱり、慎吾ちゃんの方がスマップ寄りな感じもするけど、でも違う。このアルバムは、当然だけどよりパーソナルだ。香取慎吾という人物が持っている多様な魅力にスポットライトを当てている。だから、とっても彩豊かだけど、あくまでも一人の人の魅力にフォーカスしたアルバムだと思う。だから、ヤンチャな感じがしつつも大人っぽいし、落ち着いてもいる。それが今の年齢の彼が放つ魅力であり、そこを全く外さない楽曲群だ。
だから、全く失投が無い。しっかりと平均点以上を全曲がとってくる。これは決して「無難」ということではなく、明確に狙いを定めた冷静さと、玉手箱からバンバン物を適当に取り出してはしゃぐような子供っぽいヤンチャさがきちんと同期している、狙いと偶然の見事なバランスゆえ生まれた、見事にコントロールされた傑作だ。「Trap」の時も書かせて貰ったけど、やっぱりこれは、スマップ時代のソロとしての彼ではなく、完全に一人のアーティストとしての香取慎吾のアルバムなのだ。当たり前だけど、アルバムを聞いて改めて実感した。これだけ魅力的なアルバムであるということは、イコール彼がとても魅力的な人物であることを示しているんだと思う。
それぞれの曲も、しっかり「今」の音を鳴らしつつも、ただ最先端の音の借り物になっていない。要は、ちゃんと「J-POP」している。このバランスも本当に絶妙だ。
何度も繰り返しになるけど、とにかくこのアルバムは楽しそうだ。だから、聞く側もとても素直に楽しめる。20200101という、単に発売日をタイトルにしたのだろうけど、2020という、どうあがいてもシンボリックになってしまう年を、しっかりと理解したうえで、「ニワニワワイワイ」と、なんとも賑やかで楽しげに読んでしまう。何ともキュートな魅力に、この作品は(彼自身も!)溢れている。