ヅレブロ  日々の徒然~音楽、映画、ドラマ、キャンプ~

アラフォー男子inHokkaido。徐々に記憶力が落ちてきたワタクシの備忘録的ブログ。もし、だれかのやくにたてばとてーもしあわせです。これから書きたいことを考えてタイトルを変えてみました!!

Moment Joon 「Passport & Garcon」

僕は基本的にヒップホップを聞かない…わけではないのだけど、とりあえず洋邦問わず話題になっているものは聞いてみるけど、正直ハマらないことが多い。それは単純に「共感しづらい」のだと思う。なんせかんせ、僕は歳をおえばおうほど、死や痛みを伴う作品がとても苦手になってしまった。ドラマでも、人が苦しむもの(というか、苦しみそうな作品)は見ないし、直接的な表現は苦手だ。それの善し悪しを論ずると、きっと「悪し」が勝つのだろうけど、だからといってこれはそうそう変えられるものではない。

音楽、ヒップホップの話に戻ると、そんな僕でも、年に数作は「これは!」と思うことがあって、今作はまさにその1作だ。ていうか、個人的にはこれはおそらく年間ベストなんじゃないかと思う。

ある時期、日本の音楽の悲劇は、「歌うべきテーマをもたない」ことと言われていた。おしなべて、のっぺらとした平和な社会、基本中流階級の経済的安定、治安の良さ。今思えば、当時から全くもってそんなことは無かったのだろうと思うのだけど、そして、今は全くそうではないと思うのだけど・・・。その点において、彼は明確なテーマ、「韓国出身で大阪在住、自らが受けた様々な差別、よそ者である、という意識」がある。このアルバムで、彼は、おそらく誇張でも何でも無く、自らが受けた扱い、自分が日本の社会において感じていることをしっかりと自分の言葉でリリックで届けてくる。そのフロウは日本語を使いながら、韓国語の風合いがある。それが彼の立ち位置を、日本語を使いながらも自国のアイデンティティではないこと、でも、それ自体が彼のアイデンティティであることを痛烈に表現している。

それを聞くと、そこには彼の届けようとするメッセージ、感情と、その言葉はとてもクリアに高い純度でつながっているように感じる。僕は日本語しかわからないので、自分の感情を他者に届けるツールとして、他国の言語がどこまで機能するのかはわからないけど、この身に着けることが「難しい」とされる日本語でも、どれだけ適切な言葉を用いても自分の伝えたいことの50パーセントも届けられてないな、と思うことは多々ある。でも、彼のリリックはとても「伝わる」気がする。ズレが少ないように感じる。だからこそ、そのリアルは、勝手な表現かもしれないけど、自分のことのように伝わる。その差別は、レベルこそ違うかもしれないけど、自分が社会において感じていることと共鳴しているように思う。漫然と日本に生きている僕のような人間は、ここで反省すべきこと、行動を起こすべきことがいっぱいあるのはわかる。でも、それ以前に僕はこのアルバムにとても共感した。そして、勇気づけられた。

ただ、それで終わっては意味がないのだろう。僕自身は思想としては左翼的だと思うし、少なくともレイシストではない…筈だ(でも、自分の感情の赴くままに行動・発言すると、危ういな、と思うこともある。本当にそれは情けないし愚かなことだと思う)。でも、だからといって何かを行動に移しているわけではない。どころか、カウンターのような汚い言葉に強い反対を言葉で表明するのは、お花畑かもしれないけど、反対的な考えを持ってしまう。でも、でもやっぱり、自分はそのスタンスできっと生きていくと思う。そんな自分に今できるのは、この音楽を愛し、それを否定するものをきちんと否定することじゃないだろうか。こんな自分であっても、それくらいはやりたい。

あと、リリックばかりについて書いてしまったが、このアルバム、トラックがめっちゃめちゃ格好良い。音が研ぎ澄まされているだけじゃなく、しっかりと音に「世界」がある。色があって、空間がある。

まさに今鳴っている音楽であり、聴きたい音楽だ。最高のラッパーMomentJoonがこの時代にいることはとても大切なことと思う。

 

 

Passport & Garcon [Explicit]

Passport & Garcon [Explicit]

  • 発売日: 2020/03/13
  • メディア: MP3 ダウンロード