RYUTist 「ALIVE」
4th full album「ファルセット」からの先行配信曲。
楽曲提供は蓮沼執太フィル!!
素晴らしい楽曲群に彩られたRYUTistの楽曲提供のなかでもこれは久々に「おぉぉおお!!!」と唸る!!そう来たか!!なるほど!!!!
今や誰がアイドルに曲を提供しても驚きはしないし、とりあえず可能な限りのジャンルはありとあらゆるグループが横断した気がする。そして、その中での幸福な出会いも、出尽くしてはいないだろうけど、ある程度予想がつくようになった。
そんな中でこの曲は、とてもとても良い。新しい出会いというほど革命的な何かは起きていないけど、想像よりももっと深くて広い場所に繋がっている。互いにとって刺激的で幸せなコラボレーションだったように思う。
楽曲は、イントロからモロに蓮沼執太フィル!!!って感じだし、ひたすらにきれいな歌声はいつものRYUTistだけど、しっかりと互いに新しい扉を開けている。
これは新しいRYUTistの代表曲になるだろうし、それ以上に蓮沼フィルにとって、明らかに次につながる一手だと思う。彼らの魅力がより幅広い世界で花開いているし、とにかく敷居が低い。彼らの個人的な印象としては、ライブハウスよりも美術館や公園のような場が似合う感じがあって、とても楽曲はポップなのに、何故かよくわからないハードルがあるような気がしていた…のだけれども、この曲はキラッキラなRYUTistに導かれるように、メロディの美しい曲線がどんどん高く高く昇っていくような印象がある。
互いの長所を惜しげもなく披露したうえで、さらなる新しい扉をも開く一曲。
ヨルシカ 「春ひさぎ」
ここ1週間ほどヨルシカばかりを聞いている。
単純にハマった。ここ数年ないほどにハマった。最高だぜヨルシカ。
最初のきっかけはtk from 凛として時雨がヨルシカのボーカル、suis(スイ)さんを迎えた「melt」という曲を聞いてsuisさんの声をとても気に入ったからで。でも、ヨルシカ自体にはその段階では、そこまで大きく惹かれなかった。ノーチラスとか良いなーと思ってたのだけど。
で、ちょっとしっかりと聞いてみようと、プレイリストを作ったのが沼だ。それ以来沼沼でヌマヌマだ。
元々ボカロ界隈で名を馳せていたn-buna(ナブナ)さんという方とボーカルsuisさんのバンド、ヨルシカ。とにかく僕はボカロに疎いのだけど、これをきっかけにナブナさんのプレイリストも作ってみたがやっぱり僕はボカロははまらない。世代(アラフォー)なのか好みなのか。
若い世代の若様たちに熱狂的に支持されるヨルシカが、その文脈から評価されているのは間違いないと思うのだけど、そこまで強烈にボカロP出自感があるわけでもないヨルシカのサウンドは、正直、90年代に青春を過ごした僕らアラフォーや、もしかしたらアラフィフの皆さんにもかなり響くもののように思う。痛みや喪失を歌った歌詞を「若い」と受け付けない人はいるかもしれないけれども、n-buna氏の描くメロディは、彼が好きと言っていたthe1975や、レディオヘッド(モロにクリープのズギャッ!!!というギターが入ってたから多分!)等ukの感傷的ロックサウンドも大きな要素なのだろうけど、個人的にはとても90年代以降の邦楽ロック(ロキノン系と言っても良い)の影響を強く感じるので(アジカンやバンプ、フジファブリックや彼らのフォロワーであるカナブーンあたりまで)、僕の世代、というか、少なくとも僕にはとても聞きやすかったし、引きつけられた。嫌みな言い方に聞こえるかもしれないけど、彼らの音楽はとても優秀な邦楽フィルターがあるように思うし、とても邦楽的だと思う。
とにかく、彼らの魅力は何と言ってもn-bunaの切なく美しいメロディとそれを120%引き出すsuisの声だ。ここには本当に彼らにしか描けない世界があるし、音がある。
極めて個人的なことなのだけど、僕はどうしても詞が頭に入ってこない。音楽は大好きだし、そんじょそこらの同世代の人よりも、よっぽどいっぱい聞いていると思うけど、これはどれだけメッセージ性が強いバンドでも、歌詞カードを読みながらでもダメなので、そういう残念な何かが僕自身にあるのだろう…。だから全くもってカラオケで歌が歌えないことが多い。話題がそれたけど、何が言いたいかと言うと、それでも彼らのストーリーはイメージとして強く残るということだ。それだけ彼らの詞には、楽曲には「強さ」があり、完成された世界観があるのだろうと思う。
そして、今作は7月リリースのニューアルバム「盗作」からの先行配信。過去2作で、エイミーとエルマという二人のストーリーを描いた淡い青色の世界から一転。今作は「音を盗む」「俺」の話。ということで、その音も大きく変化を遂げている。
ネットだと「ジャズ」というキーワードが多く見られ、とにかくその変化に皆がワクワクしているのが伝わって、勝手ながらとても興奮した。
何というかウッドベースが似合いそうな、彼らとしては新機軸であろうサウンドは、確かに「ジャズ」というのはわかる。僕の適当な知識でもつなげることができる。ただ、ジャズというのはとても幅の広いもので、その中でもこの曲の音は、やはりとても邦楽的なものに感じた。どこかしら最初のころのエゴラッピンのような。
suisさんの歌い方も低音の効いた歌声になり、これもまたとても魅力的。
それこそ僕が最初に好きになったtk氏とのmeltもヨルシカとは全く違う歌い方だったので(現代版nokko!!と思ったのでしたよワタクシはね)
もの凄く表現力のスキルがあって、まだまだ見えない顔がいっぱいある素晴らしいボーカリストだと思う。
この曲は、本当に新しい世界の扉をあけたような、ゲームの次のステージに行くワクワク感に似た、何とも言えない興奮が募る最高のリード曲だ。
アルバムの他の楽曲名も発表されており、
既発曲と同名の「爆弾魔」という曲名は、前作までの世界とここ(盗作)が同じで、その曲をどこかで聞いて盗んだのだろうか。
ティザーで流れるベートーヴェンの「月光(ごめんなさい、曲名わからずネットから拝借。聞いたことのあるフレーズだとは思ったんだよ!?でも曲名までわかんないの!ごめんね!)」とアルバムに付属する月光ソナタという少年が弾いたという曲名の関係も「盗作」なのか。
これを考え出した段階で完全にヨルシカの世界にドンズバっとハマっているわけなのだけれども。
ワクワクドッキドキでヨルシカにヌマヌマな状態で7月の末を待ちたいと思う。
haruka nakamura 「スティルライフ」
世界中で、コロナの影響で自宅での生活が余儀なくされるなか、インストゥルメンタルの需要が増しているそう。なるほどなるほど。わかるわかる。
おそらく、「ながら」でかけれるのは勿論だし、定額ストリーミング(以下サブスク)の普及もその一因だろうと思う。日本人以外の感覚はガラパゴスな環境で生きているのであろう僕には世界の人の気持ちはよくわからないけど、僕個人の印象としては、インストをCDで買うのはどこか抵抗があるのではないだろうか。「歌があったほうがなんかお得!!」という貧乏根性なのか、そもそもバカでかいヒット曲が無いからなのか。インストのヒットといえば、教授のエナジーフロウ以来無いと思うし。僕個人としても、サブスクで聞くまではインストのようなものを聞く機会は少なかった。でも、サブスクでガンガンとインストゥルメンタル・チル・ニューエイジ等のキーワードで聞くようになると、実のところインストの方が良く聞くし、飽きない。そして結果としてCDで購入する作品もそのようなもののほうが多くなった。理由は、良い音で聞きたいのと、ジャケットが凝っているものが多いから。
だから、僕としては、おそらくおきているのであろうインストブーム(いや、おきてないのかもしれないけどね…)は、至極当然だし、ここから沼にはまる人続出!!を願っている。願って止まない。
で、今作。
おそらく日本でインストを聞こうと思うと、確実に通るであろうアーティスト、haruka nakamura氏の新作。
これが本当に素晴らしい。僕はほぼ毎日聞いている。エビ中やukkaやブクガと同じくらい聞いている(最上級の褒め言葉と認識して頂きたい)。
これは、haruka氏初のピアノソロアルバムであり、ミュートピアノというものを使って録音されている。このミュートピアノ。当初この話を聞いたとき、何故か僕はフェンダーローズと混同し、「何故そんなアダルティな…」と思ったが全く違った。自分の脳みそが一体どういう軸で繫がっているのかを知りたい。
ミュートピアノとは…
あれ??
あれれ???
これがね、ネット検索では全く出てこない。フェンダーローズと間違うわけだよ(違う)。
全くは言い過ぎですな。でも簡単に検索するとなんか違う。
haruka氏の記載によると、要はピアノの弦とフェルトの間に布を挟んでいるらしい。
なるほど。
驚くべきことに僕はピアノが弦とフェルトで鳴っていることをここで知った。いや、違うのか???それすらわからない。愚かしい僕をお許しください。
とにかくその間に布を挟むことで、非常にぬくもりのあるこの音になるようだ。そしてその布を変えると、音の質が変化する。らしい。
とにかくだ、この音はそうやってつくられている。
その、この音、がとってもすごくすばらしくミラクル素晴らしいんだ。
俗に言う宅録というもので、ゆえ、音質はきっと良くないのだろう。でも、昔から僕は宅録が好きだ。いや、中村一義が好きだ。
話を戻す。
この作品には、日々の音、空気が、そのまま本当につまっている。
打鍵、ペダルの音もそのまま入っているとharuka氏が書いているように、ガタッ、ゴトッという音、サーッという音、音が鳴るために動く全ての音がそのままに録音されている。
正直、僕は最初、この音が大きすぎる気がした。本当にピアノの音色と並列くらいになっているバランスが、良いけども…、と思った。でも、それが何度も聞くうちにそれ自体がとてもとても愛おしくなった。これは個人の感想なので、最初から素晴らしいと思う人も、最後まで気になる人もいると思うけど、僕にとってその音がたまらなく感じられたときに、きっとこのアルバムをずーっと僕は聞き続けていくと思った。
そこで鳴らされるメロディは相変わらず絶品だ。そこにこの録音、音が重なっていくと、haruka氏の描く世界、何というか…ものすごく深い孤独が、孤独のままで連帯していくような音、が、美しく体に染み入っていく。
ほんとうにずっと聞いていたくなる作品。
そして、haruka氏は、既にもう一枚分の作品、このスティルライフの続編を完成させているという。秋頃のリリースとのこと。そこに詰まる音を楽しみにこの作品を聞き続けていきたい。
あと、こういう音楽が好きな人は皆知ってるのでは?というくらい有名な「雨と休日」というお店(オンラインショップあり)では、有償ですが、ポストカード付きのセットも販売しています。
乃木坂46(白石麻衣ソロ) 「じゃあね」
僕は、アイドル好きだが、そんなに秋元先生のグループは詳しくない。
でも、坂道グループは好きな曲が多くあるので(詞は正直そんなに好きではない)、プレイリストに結構な曲数が入っている。
ので、乃木坂についても、主要メンバーの顔と名前くらいは一致するが、その程度の知識で、全く持ってそれ以上ではない。
という、前提でこの白石さんのラストソロ曲を聞いて、正直度肝を抜かれた。
凄い。本当にこの曲、というか詞が凄い。
誰が聞いてもわかるように、本人作詞の卒業ソング、別れの歌だ。
で、誰が聞いてもわかるように、恋愛曲のていの、ファンとの別れの曲だ。
それが、信じられないくらいにわかりやすい。とんでもなく素直で、まっすぐ。
様々なたとえを用いているのだけど、これまた誰が聞いてもわかるように
「卒業を決意したけど言い出せず」「ファンが私を変えてくれて」「もう行かなきゃいけなくって」「ファンとの思い出を回想して」感謝を込めて、私らしく旅立つ「歌」だ。
誰が聞いてもわかる。そして、僕が聞いてもわかるのだから、おそらく寸分のズレもなく、ファンに届く。
ちょっと失礼な表現だと思うけど、使っている表現や詞の流れは、小学生の感想文レベルだ。でも、それを誰でも書けるものかと言われると、これはぜっっっったいに書けない。
書けるとすれば、それこそ、全く同じ立場に立った小学校高学年くらいの子供じゃないだろうか。
絶対に秋元先生だって書けないはずだ。いや…彼は作詞家である以前にもの凄く戦略家であると思うので、もしかしたらかけるのか。いや、書けない。ていうか、書けないで欲しい。お願い書けないで。夢を見させて。
とにかく、僕が言いたいのは、とんでもなく素晴らしい詞だ、ということ。
白石さんがとても美しいのは知っているけど、どんな人かは僕は全くわからない(この曲のPVも今のところ見ていない)が、これを聞く限り、とてつもなく素敵な、まっすぐで純粋な人なんだろうと思う。
それじゃないとこれは書けないだろ。お願い書けないで。
特に僕はここが好き
時計の針戻せたら
いつのどこに戻したいかな?
出会いの日かな もっと前かな
でもいいの 今以上は無いから
あぁ、すげぇ。
似たような歌詞はいっぱいあると思う。モチーフはありきたりだし、それこそ昔の青春パンク的なころなら巷にあふれてそうな歌詞だ。
でも、書けない。これはそうそう書けない。
これを聞いて、乃木坂から本当に素晴らしいセンターが旅立つんだな…でも、これは止められないよな…幸あれ…幸あれだYO…。
と思った。
本当に何も知らないのに書いて申し訳ない。でも、ブログに書きたくなる、素晴らしい歌詞だと心から思う。
卒業がコロナで延期になったことをニュースで知ったけど、きっと彼女は、その場で選ぶ最適解を選び続けられる人なのだろうと思うから、きっと選んだそれが正しいのだろう。
で、PV貼ってみた。あとでみてみよう。
赤い公園 「THE PARK」
素晴らしい。感動的ですらある。
もう、とにかく全人類に聞いて頂きたい。
とにかく曲が文句なしに全曲素晴らしいし、飛ばして聴こうという気になる曲が無い。津野さんの才気が迸っている。
そして、このアルバムがある種のセルフタイトル作であり、第2のデビュー作であることを見事にフレッシュに証明しているのが、何と言ってもヴォーカル石野さんの歌声だ。
アイドルネッサンス時代からファンである僕のような人間からすると、彼女の赤い公園のヴォーカリストとしてのデビュー戦、ビバラロックの彼女の歌声は正直ちょっとびっくりした。いや、その場に僕は居たわけでは無く、ネットで聞いたのでそう思ったのかもしれないけど(ていうか、アイドルネッサンスも僕は生で聞いたことがございませんので…)、あれほどに表現力があって上手な石野さんが、(あくまで僕の聞いた印象だけども)全くと言って良いほど、彼女の実力が発揮できていないように聞こえた。萎縮しているような、借りてきたネコのような。それゆえか、勿論前ヴォーカルの佐藤さんの魅力もあると思うけど、コメント欄は賛否両論だった。本当に勝手だけれど、何とも悔しかった。そして、上手けりゃ上手くいく、上手さが伝わるって単純な事じゃないんだろうな、と思った。
でも、その後は本当に快進撃というか、どんどんどんどんその力を発揮していった。
今までの過去楽曲ではなく、オリジナルの歌、正に石野さんの最高の武器をを手にし、その楽曲を誰の真似でもなく、彼女の解釈で着々と乗りこなしていった。本当に津野さんの曲は見事なオーダーメイド作品だと思う。
その集大成、というか最強の通過点がこのアルバムだ。とても瑞々しくて活き活きしていて、且つしっかりとバンドを一つに繋ぐ見事な歌。そして見事な楽曲と演奏。
本当に何度でも聞ける。何度も聞きたくなる。
結果として、躍動するリズム隊など、本当にこのバンドを大きく変化させ、リフレッシュさせた見事な1枚だ。
そして、やっぱり津野さんは天才だ。
職業作曲家のような、見事に完成された楽曲でありながら、しっかりとバンドであり、そのメンバーである津野さんが、そこで伝えたいこと、なんというか野心のようなものが見事に息づいている。それをバンドという魔法が何段階も上に、そして何段階も説得力をもって届いてくる。
あらためて、バンドって最高だな。赤い公園最高だな!!!という大傑作。
そして、このアルバムはこのyumeutsutsu
の、
こんなフレーズで幕を下ろす。
そこどけGUYS 私は行くよ
構わず行くよどこまでも
何%の可能性でも知ったこっちゃない
行こうぜ
美しい圧巻の近未来
絶景の新世界
最高だ。
こんな最高な歌詞があるかってくらい最高だ。とにかく大好きだ!!
リミッターをぶっ壊しながらもただただその先を突き進む赤い公園。
でも、その壊れたリミッターの扱い方すら知っていそうな彼女らがとても頼もしい。
The Weeknd 「アフター・アワーズ」
こりゃ格好良いや。メロディもドラマチックでメランコリックで最高だや。
以前にも書いたのだけど、ワタクシは、基本邦楽を軸に聞いてるが、話題の洋楽関係は基本1度は聞いている。が、ダメなことが多い。音が格好良いのはわかるのだけど、ラップばかりだと、どうしても詞がわからないことが原因なのか、何度も聞こうと思わない。これは自分の雑さとか適当さなのかもしれないな、と思うけど正直よくわからない。ゆえ、洋楽で聞き続けるアルバムは最近はとても少ない。
でも、たまにピンときて、聞くものもある。ラップのものはやはり少ないのだけど。サンダーキャットとか、ボン・イヴェールとかは「なんじゃこりゃ!格好良い!!」と思った。ホレ、ラップじゃない。ラップが嫌いなわけじゃないので、何故ハマらないのかは、本当によくわからん。でも「すげえな!!マジすげえな!!!」と思う作品は明らかに日本のものよりも洋楽のほうが多いと思う。
で、今作。
あまりに無知なワタクシは、彼もラッパーだと完全に思っていた。本当に申し訳ない。
ので、聞き進めるうちに「あれ?このスウィートかつ、どこか哲学的な雰囲気もあるこの歌声こそが週末さんなの??ゲストヴォーカルじゃないの!?!?てか、weekendじゃなくてweekndなんだね!?!?」とABCを覚えたばかりの小学生英会話並みの理解力と知識をバッコリ発揮致した次第でアリマス。
兎に角、声が良い。僕はソウルフルな歌い上げ系シンガーが好きではなく、音程がはずれるかどうかギリギリの細い声がとても好きだ。だから邦楽が好きなんだろうと思う。例を挙げると、TKプロデュース時代後期の華原の朋ちゃんのシングル曲全般。音程があってるのかどうかすら微妙な歌とか本当に良い。…という嗜好の人にとって、洋楽のヴォーカリストは基本上手すぎる。いや、いいよね。上手いんだから。でも僕にとってはソウジャナイダヨー!という気持ちになる。
が、彼の歌声はとっても好きだ。凄く良い声だと思う。先ほど哲学的な声と書いたが、我ながらイマイチ意味がわからない。どういうことだろうと考えると、何と言うか、とても深い所で、一切僕(リスナー)と交わらない感じがする。深い悲しみを抱えているというか、絶望的な距離、温度差があるように感じる。でも、その距離を超えて、その声は、すぐ近く、耳元よりももっと近くで語りかけてくる。もの凄く遠いのに耳よりも近い声。どういうことだ。どんどんわからないけど、そんな印象のとても美しい声。
そして、曲が良い。めちゃめちゃ切なく、ドラマチックだ。これは日本人も好きだろうと思う。
で、なんたって音の強度が強い。それこそ外から鳴るというより体の内側からうちならされるような感覚がある。これがやっぱり日本の音との最大の違いだろう。一体、日本には何が足りないんだろうか。こういうとこに必死でくらいついているのがワンオクとか、近作のアジカンとかなのだろうと思うのだけど、それをバンドでならそうとするのは大変そうだけど、打ち込みでもやっぱり日本の音楽はこの音が鳴らない。ここさえ打破すれば、案外日本の歌謡的メロディとかは海外でウケたりしないんだろうか。この80年代っぽいアレンジとか、合うと思うんだけど。でも、とすると日本のガラパゴスなのは、曲ではなく音の強さ、ということになるんだろうか。
で、それを打破できたのが例えばBTSとかなんだろうか。確かに今作の雰囲気はちょっと近い感じもする。いや、詳しい人とかだと「なにいうてらっしゃりますのん??」というかもしれないけど、僕は感じた。確かに同じ感じを感じたんだい!
・・・結局なぜかはわからないけど、この「音」を目指して作っている日本のクリエイターの方々はいっぱいいらっしゃるのだろうから、やっぱり日本でこの音を鳴らすというのはきっと凄く難しいんだろう。でも本当、どうすればいいんだろうかね???電圧とかなのかい??
話が逸れたが、とにかく、このアルバム、素晴らしいメロディを素晴らしい声と素晴らしいアレンジで歌った、誰がどう聞いても傑作だろうと思う。しかも飽きない。何周でも聞ける。
そして、最後にこのアルバムのジャケットなんだけども(いや、皆さん見てらっしゃるでしょうが)
マジか・・・どうした一体。と本当に思った。正直このジャケットをツイッターで見て、聞こうと思うまでに多少の時間を要した。
って、アレ??
これってもしかして
この人が海から上がったのか!?!?(違う)
ていうか、近年気に入った2マイがこのジャケットか…。一体なぜかは全くわからないが、どちらも傑作なので是非。
Moment Joon 「Passport & Garcon」
僕は基本的にヒップホップを聞かない…わけではないのだけど、とりあえず洋邦問わず話題になっているものは聞いてみるけど、正直ハマらないことが多い。それは単純に「共感しづらい」のだと思う。なんせかんせ、僕は歳をおえばおうほど、死や痛みを伴う作品がとても苦手になってしまった。ドラマでも、人が苦しむもの(というか、苦しみそうな作品)は見ないし、直接的な表現は苦手だ。それの善し悪しを論ずると、きっと「悪し」が勝つのだろうけど、だからといってこれはそうそう変えられるものではない。
音楽、ヒップホップの話に戻ると、そんな僕でも、年に数作は「これは!」と思うことがあって、今作はまさにその1作だ。ていうか、個人的にはこれはおそらく年間ベストなんじゃないかと思う。
ある時期、日本の音楽の悲劇は、「歌うべきテーマをもたない」ことと言われていた。おしなべて、のっぺらとした平和な社会、基本中流階級の経済的安定、治安の良さ。今思えば、当時から全くもってそんなことは無かったのだろうと思うのだけど、そして、今は全くそうではないと思うのだけど・・・。その点において、彼は明確なテーマ、「韓国出身で大阪在住、自らが受けた様々な差別、よそ者である、という意識」がある。このアルバムで、彼は、おそらく誇張でも何でも無く、自らが受けた扱い、自分が日本の社会において感じていることをしっかりと自分の言葉でリリックで届けてくる。そのフロウは日本語を使いながら、韓国語の風合いがある。それが彼の立ち位置を、日本語を使いながらも自国のアイデンティティではないこと、でも、それ自体が彼のアイデンティティであることを痛烈に表現している。
それを聞くと、そこには彼の届けようとするメッセージ、感情と、その言葉はとてもクリアに高い純度でつながっているように感じる。僕は日本語しかわからないので、自分の感情を他者に届けるツールとして、他国の言語がどこまで機能するのかはわからないけど、この身に着けることが「難しい」とされる日本語でも、どれだけ適切な言葉を用いても自分の伝えたいことの50パーセントも届けられてないな、と思うことは多々ある。でも、彼のリリックはとても「伝わる」気がする。ズレが少ないように感じる。だからこそ、そのリアルは、勝手な表現かもしれないけど、自分のことのように伝わる。その差別は、レベルこそ違うかもしれないけど、自分が社会において感じていることと共鳴しているように思う。漫然と日本に生きている僕のような人間は、ここで反省すべきこと、行動を起こすべきことがいっぱいあるのはわかる。でも、それ以前に僕はこのアルバムにとても共感した。そして、勇気づけられた。
ただ、それで終わっては意味がないのだろう。僕自身は思想としては左翼的だと思うし、少なくともレイシストではない…筈だ(でも、自分の感情の赴くままに行動・発言すると、危ういな、と思うこともある。本当にそれは情けないし愚かなことだと思う)。でも、だからといって何かを行動に移しているわけではない。どころか、カウンターのような汚い言葉に強い反対を言葉で表明するのは、お花畑かもしれないけど、反対的な考えを持ってしまう。でも、でもやっぱり、自分はそのスタンスできっと生きていくと思う。そんな自分に今できるのは、この音楽を愛し、それを否定するものをきちんと否定することじゃないだろうか。こんな自分であっても、それくらいはやりたい。
あと、リリックばかりについて書いてしまったが、このアルバム、トラックがめっちゃめちゃ格好良い。音が研ぎ澄まされているだけじゃなく、しっかりと音に「世界」がある。色があって、空間がある。
まさに今鳴っている音楽であり、聴きたい音楽だ。最高のラッパーMomentJoonがこの時代にいることはとても大切なことと思う。