Mrs.GREEN APPLE 「青と夏」
青春を描く、という行為は「いかにしてその終わりを見せるか」が一つのキーだ。
ある種「終わらない青春」というロジックは逆説的に青春の有期限を、刹那を描くことになるし、その瞬間を描く行為は、確実にその先を印象付ける。
どんな形であれ、それには終わりがある、と描けることが青春を強く、色濃く、印象的に描くことになる。
その点において、このMrs.GREEN APPLEの「青と夏」は見事な一曲だ。
詞を読むと、そんなに特別な歌詞なわけではないと思う。風景や音を印象的に使い、「僕ら」に「私」に「主役は君なんだ」とその覚悟を問う流れは上手だし、わかりやすい。でもそこまで特筆したものではない。
この曲は、メロディが、演奏が、大森氏の歌が重なった瞬間、一気に青春めがけてフルスロットルで、速度を増していく。
序盤は圧倒的な瑞々しさと、さわやかさで、清涼飲料水のCMとかが似合いそうな印象(この曲は映画の主題歌なのですが、詳しくは存じ上げないので割愛させて下さい…)。
それが、転調した
「寂しいな やっぱ寂しいな いつか忘れられてしまうんだろうか」
あたりから、一気にそのストーリーに引き込まれる。
そして、それぞれ聞く人たちの中で、それぞれの夏のストーリーが水しぶきを上げてジェットコースターのように展開していく。
そして
「映画じゃない 僕らの夏だ」でしめくくられる。
見事。
大森さんはたぶん22歳くらいだと思うので、「青春」との距離感は非常に微妙なところだと思うのだけど、彼はすさまじく「若者への当事者意識」がある人だと思う。彼の歌詞は大人への懐疑的な意識を感じさせるものが多いし、不誠実なものには相手がなんだろうが容赦なく牙をむく。でも、この歌はその「大人」の世代にも確実に刺さる一曲だと思う。そして、その刺さる部分は彼が嫌悪する「大人」ではなく、皆が持ち続けている(隠している 隠れている 忘れている)少年性だ。
ろくでもない大人は、大人という無駄に生きた経験と不要な知識を背に自己肯定と私欲のために子供よりも子供っぽい理屈を振りかざす。その答えは子供のころから持っていたというのに。
彼の歌は、その「大人」にもどこかに残る「正解」を正確に射抜いてくれる。だから、多くの世代に響くと思う。つまりは、だれだってそこに戻れるはずだし、そこから始められる筈だ。
なんて、理屈っぽいことを書いてしまったけど、そんなことは何も気にしないで「夏!!爽やか!!!青春しようぜ!!!!」と1歳から150歳くらいまでが聞くことができる名曲だと思います。
夏は過ぎたけど、青春はそれぞれ続いているんだし!!
PVは、それぞれのストーリーの青さがたまりませんが、ミセスの演奏が一番青春していると思います。最高!!