長谷川白紙 「エアにに」
一聴してとんでもない作品だということはすぐにわかる。わかりますが、さてはて、これはいかなるものでしょう???
音の密度がとんでもないのに、今まで聞いた様々な物と全く違う音楽であるがため、作用は人によって大きく違う。密度が濃いのに解釈に大きな余白があるというのが、この作品のものすごさではないでしょうか。
個人的には「洗濯」みたいなアルバムです。僕は日本のポップミュージックが大好きなので、基本、時間があればずーっと音楽を聞いています。当然好きな物には偏りがあるし、ある種気づかないうちに自分ルールで良し悪しを決めていることが多くあると思うんです。
AメロBメロが来たらサビが来ると思ってますし、それをもう1度繰り返してその後最高なCメロと大サビが来て「フッフー!!!!」みたいな興奮を味わう、みたいな。そんなステレオタイプなことではなくても、どこかで決めつけって絶対にあって。この作品は、それらを理屈では無く、本能でもなく、普通に「聞く」という体験で、リセット、というよりも整理してくれて、整頓してくれる。改めて、音楽を聞くスタンスを整えてくれるようなアルバムだと思います。
これって、そうそうあるものではなく、少なくとも僕はそのような感想をこのアルバムで初めて抱きました。これは、ノージャンルで何回な実験音楽(あ、これがジャンルか)みたいなものでは絶対にダメで、少なくとも同じ世界にあるものじゃないとダメだと思います。彼の音楽は圧倒的な創造性と実験性と密度がありながら、しっかりとどこか懐かしいというか、J-POPの文脈にあるようなところが、どこかにあるように感じます。だから、しっかりとそっと、聞く自分の中に血液のように入って来て、余計な概念を取っ払ってくれる。
何に近いというものも全くピンとはきませんが、敢えて言えばコーネリアスみたいな感じがしなくもない…ですが、あのコーネリアスの空気・水・自然の中に並列で電子音を置く、ようなものとは決定的に構造が違う気がします。それは精神の領域なのか、もっと理屈で表現できるものなのかは本当に全くわかりません。ただ、この音楽に会えて、「やっぱり新しく音楽を聞くというのはめっちゃワクワクする!!」という根っこの喜びみたいなことを感じられたのはとても幸せな体験だったと思います。
本当に全曲素晴らしいです。
※ すみません!amazonのアルバムが貼れませんでしたー!!